次に繋がる小旅行
旧富山村と斜面集落


川売の梅の花を後にして、目指した先は何度も訪れたことのある旧富山(とみやま)村の湯の島温泉。
相変わらず到着するのに神経も消耗する長い道のり。
その甲斐あって、訪れるたびに温泉では週末というのにのんびりと。

← ここに見える集落が旧富山村(現・愛知県豊根村)の
唯一にして、と言っていい最大の集落です。

本来なら、手前に佐久間ダム湖の豊かな水が湛えているのですが
渇水期と記録的な降雪量の少なさで味気ない光景です。

ここ、旧富山村は静岡県と長野県に接する「秘境地帯」
山は険しく、平地はない。人も少なく道は険しい。

こんな不便極まる場所ですが、
それが故、マニアの間では人気のエリアでもあるのです。
写真の見える先、つまり対岸は静岡県。
市町村合併でここが浜松市と言われてもピン!と来ないのですが、
浜松市水窪町になります。

この橋の向こうに無人駅のJR飯田線大嵐駅があります。
駅前には民家が一軒。実質、駅の機能は静岡にあって富山の玄関口。

何時間に一本、文明の音でもある飯田線の音以外は全くの自然です。

秘境地帯に相応しい大嵐駅。トンネルとトンネルの間に駅がある。しかし、駅舎は立派。
この駅には長い待ち時間を退屈させることもなく、
何冊もの駅ノートが置いてあった。

人それぞれに思うところあるようです。
大自然に感動したとか、祖母の家に行った孫の記述。
夏焼トンネル(通称・お化けトンネル。旧飯田線のトンネル)を歩いたよ!とか。

僕も時間はたっぷりある一人旅。
目を通していたら、ちょっとジーンとくる内容が。
年の頃も同世代のようだし、
見たこともない誰かに感動を覚え、そんな彼に声援も送りたくなる不思議な駅ノート。
大嵐駅の一つ北側が、秘境駅の中の秘境駅といわれる小和田駅。なぜ秘境かと申しますと、その駅に行くには獣道を一時間歩かなければたどり着けない、誰もいないところにある駅だからです。そもそも佐久間ダムが完成するまでは集落もあり利用客はいたのですが全て水没。駅だけが残り、未だ誰のためだか停まり機能している。

そんな駅で事件がありました。
愛知県・長野県・静岡県が接するエリア。
もう少し詳しく述べれば、天竜川の佐久間ダムから北上して
途中、北東に反れる遠山川沿いのエリアは、秘境地帯として名高いのです。

その秘境たるゆえんは、斜面集落。
平らの場所は家の敷地のみ。あとは斜面で農業を営む人々。

一軒だけで闘う農家もあれば大規模な斜面集落もある。
この光景は、我々が考える通常の土地利用の概念を見事に否定するもので、
異文化圏に来てしまった感覚すらする。
大規模な斜面集落を発見しました。
正確に言えば、何度も不思議に眺めた集落との再会です。

タイトルの「次に繋がる小旅行」はこの斜面集落との出会いなのです。
家に戻り調べたところ、大嵐駅から北に二つ目の駅。
中井侍(なかいさむらい)という集落です。  

中井侍−小和田−大嵐

しばらくは平家の落人かと思っていた。
こんな険しいところに住むなんて通常の感覚ではありえない。
しかし、調べても落人という確かな記述は出てこない。

そこで思ったのが、彼らは日照を求めて斜面で生活するようになったのかと?
険しいX字渓谷は遅い日の出に早い日の入り。
谷底に拘ってもたいした広さの平地さえ確保できない。

こんな答えに至るようになったのは、斜面集落が南や南東など
日当たりの良いところに点在し、
昔もあった谷底の街道から隠れるように存在しているわけでもない。

この中井侍の眺めは僕に興味を尽きさせない。
方々ドライブする自分にとり、新しい宿題のような出会いです。

遠くない将来、この目で確かめる場所。

こう決める僕に、はたして果敢な実行力は備わっていたのだろうか!? ナンツテ
(次の特別頁をお楽しみに!)
いつもとは違った週末を過ごしたい。そんな欲求が湧いたら、一度、この秘境地帯に足を伸ばされては如何でしょう。
名古屋からは十分な日帰り圏内。ただし、運転には細心の注意が必要です。事前の下調べをしっかりして「驚愕」ってのを味わってみましょう!!