湯抱温泉中村旅館

堆積物を愛でる湯巡りも、この宿で極まった感です。
濃厚な源泉が流れるだけで、この厚さに堆積します。

風の通る広々とした部屋に、たぶん宿で最も上質な部屋でしょう、
案内されてしばらくしたのち、運ばれてきたのは一服のための抹茶。
夕食は見てのとおり美味しくてボリュームも満点。
歴史ある宿に息づく持て成しの心を感じます。

   
 
持て成しの心は手の込んだ朝食に、寛ぎのあとは、
淹れたての目覚めのコーヒーを部屋まで運んでくれました。

穏やかな雨でも、葉桜の頃ですからね、苔むした橋の欄干に舞い降ります。
宿をあとにするとき、大奥様が座敷からお出ましになり
三つ指をついて丁寧な挨拶を申すその姿に、
ある時代までの日本の旅館の生きていた礼を覚えるのでした。

旅の最後の湯は、これまた秘湯感たっぷりの、
もちろん濃厚な湯ですが、足元から湧いてくる湯治場でもある千原温泉。
関西からも、湯巡り人が堪能していました。
僕らも彼らも、もうここから離れたくない!とは思いつつも、
先に上がったのは僕らです。
来たであろう道を、また戻り、この旅も終わろうとするのです。

 
毎回、素敵な旅を催してくれる交通社夫妻に篤く御礼申し上げます。