川魚を食せよ!
2010年6/13


熱く語るのなら、島国・日本の海の幸は、かつての物流を勘案して
それは沿岸部から20kmほどの、つまり日本の臨海部の味わい。

もちろん、塩漬けにして内陸にも持って行きますが、
多数の日本人の鮮魚といえば、少し内陸に行くだけで、川魚。

種類や味の華やかさで、流通経路が確立した戦後においては、
内陸の奥の奥にでも寿司屋が営業している。

もはや淘汰の過程に入ってしまったかのような感もある川魚料理。

その凄みは「清流でない川魚料理」にあると思っています。

さらに昔に思いを馳せる時、
名古屋は中村の藤吉郎(豊臣秀吉の幼少期)が食していただろう魚は
フナや鯉、泥鰌の類だと容易に想像できる。

濃尾平野西部は、海抜ゼロメートル地帯が広大に広がる日本でも有数の水郷地帯。
地図を見れば、無数の川は、もはや自力で海へ排出する意思もない細長い池。
川としては怠惰そのもので、河口の(電動)排水機が動かない限り、澱むまま。

そこに生息する、フナや泥鰌に
泥臭いものを感じざるを得ないのですが、
この脳天を直撃する味わいこそ、
実は、堆積平野に住む日本人が当たり前のように食してきた食文化そのもの。

時代とともに、その文化圏を狭めつつある川魚料理。
濃尾平野西部の水郷地帯には未だに地元民に愛される名店がいくつか残っています。
今回は岐阜県は羽島市に足を伸ばしました。
鯰(なまず)の刺身です。
コリコリと噛むほどに味の出る脂の旨み。
しかし、脳天を直撃する泥の風味も混在します。

当初はフナの刺身を頼みましたが、その時期ではなく鯰へと変更。

川海老とモロコの甘露煮。

そして、本日の目玉! 鯰の蒲焼。鯰丼。
味付けはウナギと同じですが
ウナギ特有の筋肉と脂身。
つまり歯ごたえと旨みはなく、
身は柔らかな蒲焼になっていました。
こちらは泥臭くもなく、とても美味しい。

珍しいものを食べましたが、
お値段的には、ウナギのほうが上。


近くの道の駅では、フナの味噌煮も買いました。

日本人は、その神道的感覚か
海で言うなら塩で揉まれる、
川で言うなら渓流の冷たさで揉まれる、
こういう環境に生きる魚類は重宝してきました。

ところが堆積平野のそれは怠惰そのもの。
身に努力の痕跡がない!!!

それは、あの独特な風味を伴うのですが、
僕らを遡ること、数代前は貴重な蛋白源でもありました。


黒々と豊かな土壌で全身泥だらけで畑仕事をしていたあの頃は
泥の栄養分も、川魚を通して摂取していたような、そんな思いを巡らしてしまいます。