秘境 夏焼集落 その一
佐久間ダムを遡上して、24km先に我々は始めて人の生活を肌で実感するのですが、
それより手前に3キロほどの対岸に、以前から激しく興味の湧く、秘境!夏焼集落が、その姿を見せるのです。

天竜川背後の急斜面に人が生活しています。


斜面集落は、ここ数年の個人的な趣味。
同じく天竜川沿いの中井侍も今年に入って3-4回は訪ねています。

夏焼集落も斜面集落ですが、今の今まで足を運ばなかったのは、一本の暗く長いトンネルのみが全てだったからです。

夏焼集落へ行くには、夏焼隧道を利用するしか方法がありません。
夏焼隧道は、そのまま細い道として地図上に描かれていますが、トンネルを出ると程なくして閉鎖。
実質は夏焼集落のみに通じる隧道なのです。

旅を時系列に書くと、僕らは、このあと大嵐駅から飯田線に乗り、同じく斜面集落の中井侍を探訪して戻ってきます。
再び、大嵐駅に戻ってから夏焼探訪に挑戦するのですが、間に、中井侍の写真を載せるとややこしいので、
そちらの旅日記は
別頁にしましょう。



大嵐駅に戻りまして、いざ、夏焼隧道です。
トンネルの形状が???と思った人は鋭いです。
夏焼隧道のこの形状。旧飯田線のトンネルを利用しています。
飯田線に新旧がある?!というのも鋭い疑問です。

全ては天竜川を堰き止めた佐久間ダムに起因します。

もともと天竜川に沿って人の生活がありました。
それが、ある日突然に水没し、夏焼の集落のみ免れるという事態に。
目の前の生活の全てが水没し、新しく巨大なダム湖が。
彼らに唯一許された外界とのルートが、この夏焼隧道だったのです。

トンネルは長く一直線。
ただ起伏があり、向こうの明かりが見えない。
富山のチビッ子は「お化けトンネル」というのですが、それなりの恐怖感はあります。
とにかく長くて暗い。
今回初めて探訪できたのも、単身での旅ではないからです。。。。。

幅は車一台のみ。
待避場所は一箇所もありません。
左右には蓋の無い側溝があり、地下水が豊富に流れている。
脱輪したら全てがおしまい。

まさかに備えて、やはり徒歩が一番安全でしょう。


トンネルを出ると佐久間ダム湖というか天竜川。

長く続いた夏焼隧道は、巨大な天然クーラーで
トンネルを出て振り返ると、もうもうと白い冷気が勢いよく外に放出されています。

トンネルを出るとT字ですが、左に出ると、まもなくして閉鎖。
実質は右に折れての夏焼方面のみ。

そんな夏焼への道も、程なく、僕らの概念を否定する道の姿となるのです。